研究プロジェクト



日本子育て学会研究プロジェクト推進委員会

研究プロジェクト推進委員会委員長  望月雅和

研究交流委員会委員長     森脇健介


 本研究プロジェクト委員会は、学会の理念を基に研究を推進していくことを目的とし各研究プロジェクトを組織し、研究者・支援者・保護者の観点も重視しております。


 2021年度は、会則に則り本学会執行部の変更もあり(本研究交流部門の研究交流委員会は、新たに森脇健介委員長が就任)、これまで活発に活動していたプロジェクトの継続を重視しつつも、新陳代謝(プロジェクトの発展・変更等)も促し、委員会規程によって、原則として2年以内に内外にて研究発表をおこなう予定とするなど(ただし、義務としては縛らず自由度も確保)、新たな取り組みや新規定の作成も検討しております。

以下の各プロジェクトは、随時、各プロジェクトにて、メンバーも入れ替え、自由に募集を行って参ります。また、原則として、すべての子育て学会の年次大会、および本学会のジャーナルで、プロジェクト報告や内容を会員向けに情報を示して参ります。


 近年は、コロナ危機の最中であり研究も困難な中でしたが、2021年度は、本研究交流部門の研究委員会・研究交流委員会との共同の企画として、「子育て・相談援助・ケアをつなぐコミュニケーション:「子育てとケアの原理」を求めて」の学会企画シンポジウムを開催いたしました。さらに、本プロジェクト関連の研究成果である『子育てとケアの原理』(北樹出版、2018)の改訂版を次年度に出版する予定であり作業を続けました。なお、北樹出版からは、大会の協賛を連続して得るなど本学会に貢献もして頂きました。

 今後も内外の研究活動を一層に進めて参ります。

参考文献

望月雅和編著
西村美東士・金高茂昭・安部芳絵・吉田直哉・秋山展子・森脇健介著『子育てとケアの原理』北樹出版、2018年。
http://hokuju.jp/books/view.cgi?cmd=dp&num=1069&Tfile=Data


研究プロジェクトのご案内

  • 「保育の選択に関する実践的な研究」

     幼児教育や保育はさまざまであり、保育には多様な選択があります。親にとっては、どのような園・所を選ぶかは大きな問題にあります。本プロジェクトは、これまで「うちの子は、どの園と合うのかな」というテーマで継続してきた理念を重視し、2021年度より改組して新たに発展させる形で「保育の選択に関する実践的な研究」をテーマに研究活動を進めて参ります。
     実践的なテーマであるために、保育園園長の経験を有し、保護者でもある黒米聖常任理事が新プロジェクトリーダーに就任し組織化し、支援者(保育士、園長など)、保護者(親)、研究者、三者の連携を重んじて、本会支援者活動部門とも連動しつつ、自由度の高い実践的な研究、活動を通して学会大会などで成果の発表をすることを目指します。

  • 「青年期・生涯学習研究」

     研究者、支援者、保護者の三位一体を重んじつつも、特に青年期や生涯発達のキャリア形成を重んじて研究活動を進めております。もともと関連の旧研究プロジェクトは終了しましたが、本テーマは重要であるため、発展的に継続できるよう「青年期・生涯学習研究プロジェクト」を新たに組織化して推進しております。2021年の大会においても、「子育て・相談援助・ケアをつなぐコミュニケーション:「子育てとケアの原理」を求めて」にて、体系化に関連するプレゼン(指定討論)をおこない、成果物出版(『子育てとケアの原理』)の改訂版の作業も続けました。次年度以降も活発な活動を継続いたします。

  • 「震災の子ども支援」

     2022年度はこれまでのボランティア活動、学会活動等で交流した方々(団体)を対象とした「震災10年後の聞き取り調査」を計画しております。聞き取りはzoom会議等を通じておこないます。これを『子育て研究』に掲載、または来年度の大会で発表、または冊子を作成する等の形でまとます。これをもって、本プロジェクトを終了する計画であります。

  • 「保育者養成の学際的研究」

     「保育者養成の学際的研究」は、保育者の保護者支援に注目して研究を進めており、現在は現場の保育者の意識を分析しています。さらに、実際に相談をしている保護者等を対象に調査を行い、保育者養成校の学生等に対しての保護者支援指導法等の開発を試みます。今後は、保護者を対象として、子育て不安相談に関する保育者の対応の印象や効果について調査研究等を検討して参ります。
     2021年は、本委員会の企画シンポジウム、「子育て・相談援助・ケアをつなぐコミュニケーション:「子育てとケアの原理」を求めて」において、保育者養成を中心するプレゼンテーションも行い(シンポジストは本学会の中島美那子常任理事による)、来年度以降も継続して保育者養成のテーマを重要なものとして、成果発表ができるよう活動を進めて参ります。

  • 「教育とケアの学際的研究」

     本年、少子高齢化を踏まえて、近年の教育、子育て領域の重要な動向の一つに、学校、その他の子育て環境における「ケア」の重視を踏まえて、教育とケアの学際的な研究交流を促す、シンポジウム開催等をして参りました。子育て支援と隣接する、生活の質(QOL)、企業倫理の専門家、ケアの原理や実務家との学際的な学術交流も進めています。とりわけ具体的な研究成果としては、『子育てとケアの原理』の出版を進めました。
     2021年度は、本委員会企画シンポジウム、「子育て・相談援助・ケアをつなぐコミュニケーション:「子育てとケアの原理」を求めて」というテーマ通り、ケアの視点から企画をいたしました。加えて、上述のように、出版物の改訂版も進めています。今後は一層に学際的な活動の推進をして参ります。

  • 「子育て支援学体系化に関する研究」

     子育て研究を包括的に捉えようとする時、本学会の理念でもある学際、実践的な幅が広がり、体系的に整合して捉えることは、たやすいことではありません。そこで本研究プロジェクトが新設されて、子育て学の体系化をめざし、本学会の研究交流委員会(元委員長・西村美東士)による活発な研究交流を踏まえて協働研究を進めて参ります。
     体系化の研究成果を創造していくこと、それを出版、研究論文投稿、学会報告などで示し、一層に学術・教育領域に貢献していくことを目的としております。2021年度は、本学会大会にて上述のシンポジウムによる体系化の探求、加えてポスター発表もし、出版物の改訂版による書面化も進めております。本学会の学際的観点の基礎理論を研究する重要なものとして自覚して活動を進めて参ります。

  • 「子育てと文化」

     子育てと文化を、多角的・複層的にとらえて探究する新規の研究プロジェクトです。子育てを生涯発達的にとらえ、大人世代が子ども世代を育てるという一方向的なものではなく、大人世代も育てる者として、人として育てられ、共に育つことに着目します。子育てには複層的な文化的背景があり、親をはじめとした大人世代は文化的価値観をもって子ども世代を養育しています。
     2021年度計画の概要は、以下の通りとなります。
     2019年4月に入管法が改正され、ますます多くの外国人が日本に在留することが予想されます。外国人労働者の雇用環境を整えることはもとより、労働者の家族、とりわけ親の都合で来日する子どもの教育環境を整えることが必要です。現状においても、すでに文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(2016年度)」によれば、日本の公立小中学校等に在籍中の「日本語指導が必要な児童生徒」は、約4万4000人に上ります。本プロジェクトは、2019年度の成果を踏まえて、この国の将来像に大きな影響を与えるであろう外国につながる子どもの教育という視点から、活動し発信していきます。

  • 「子どもの貧困問題研究」

     わが国の子どものいる家庭の相対的貧困率は13.5%であり、ひとり親家庭での相対的貧困率にいたっては約半数以上が相対的貧困にあります(国民生活基礎調査,2020)。これはOECD加盟国中でワースト第3位であり,わが国の貧困問題の大きな課題となっています(OECD, 2016)。子どもの貧困による影響は教育機会や文化的機会のはく奪は言うまでもありませんが、貧困の連鎖、社会的孤立、子ども自身の健全な育ちにも深く影響を及ぼす可能性が指摘されています.そうした中、2014年には「子どもの貧困対策基本法」が成立、施行され、連鎖を断ちきるための地道な活動(無料学習支援教室、子ども食堂など)がすでに始まっています。しかし、地域レベルの対応だけでは不十分であり、支援の効果に関する学術的な検証は十分とは言えません。さらに,昨年来のCOVID-19の蔓延による影響は深刻であり,今後その影響は少なくとも5年は続くとの指摘もあります(UNICEF, 2020)。
     そこで、本研究プロジェクトでは現場に還元できる心理学的支援について、研究者と現場で働かれている方たちでより実践的な研究を進めていきます。2021年度中に調査研究を実施するために,準備を進めています。
     なお.上述の2021年度の本委員会企画のシンポジウムにおいて、子どもの貧困に関する先行研究や現状について話題提供をおこないました。

以上