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子育てに正解主義は似合わない。

神山 潤

掲載:2010年4月22日




 「子どもにいいと言われることは何でもやりました。子どものために頑張りました。早起き早寝朝ごはん朝うんち、はもちろん、メディア接触は極力避けて読み聞かせに外遊び、児童館にも一生懸命連れて行きました。なのに・・・・・。今中学になったうちの子は、学校に行ってくれません。私が何を言っても聞いてくれません。父親とは目を合わせてもくれません。いったい私の子育てはなんだったのでしょう?」こんな声を聞いたことがあります。確かに頑張ったお母さんには「お母さんが思い描いていた理想のお子さん」があったのかもしれません。でもひょっとしたらそれはお母さんの独りよがり、なのではないでしょうか。よいと言われることをこれだけやったのだから正しいはず。必ず期待通りの結果が付いてくる。これは20世紀までの成長社会にあって私たちが毒されていた正解主義の代表的な考え方です。人間はロボットではないのです。藤原和博さんは言っています。「これまではジグソーパズルをいかに早く完成させるか、が求められた。しかし成熟社会である21世紀で求められるのは完成形のないレゴで自由な発想を膨らませること。」

 いま学校に行けないお子さんはお母さんにとって不正解なのでしょうか?いま学校に行けないお子さんは30年後どう過ごしているのでしょうか?直近のわかりやすい結果ばかりを追い求めていると、見失ってしまうことが多いのではないでしょうか?ヒトは寝て食べて出してはじめて元気に活動できる動物です。寝て食べて出して活動する結果もたらされるのは、適切なレベルの昼間のセロトニンと夜間のメラトニン活性だという仮説を私は持っています。セロトニンは心を穏やかにする神経伝達物質であり、メラトニンは眠気をもたらし、酸素の毒性から細胞を守ります。セロトニン活性が低いと長期的な報酬予測が困難となり、短期的な報酬予測しかできなくなる可能性が指摘されています。

 どうか正解主義から脱皮して、子育てを楽しんでください。子育てに正解主義は似合いません。

【著者紹介】

神山 潤: 東京ベイ・浦安市川医療センター センター長
 近著に、『ねむり学入門』のご紹介
http://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-84c9.html
「子どもの早起きをすすめる会 全国フェスタ2010」のご紹介
http://www.hayaoki.jp/event2010_special.cfm