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子育てのクロス・ロード 6

梅崎高行/細川美幸 往復書簡

掲載:2019年7月16日




久しぶりのクロスロードです。問いはシンプルに,

できるに越したことはない,のでしょうか?

梅崎  
 10連休を懐かしみながら,夏休みまであと…と,指折り数えて暮らしています。
 そんなある日,幼稚園の先生からお聞きしたお話です。
 「あれもできない,これもできない」と,子どもについての心配を話す保護者に「大丈夫。ご安心ください」とお伝えした。
 すると「でも先生,やっぱりできるに越したことはないですよね」と言われてしまい,答えに窮してしまったとのこと。
 細川さんはどう思われますか。やはりできないよりはできた方がいいのでしょうか。






細川  
 そうですね。「できないよりできたほうがよい。」そう思いますよね。わが子を願えばこそ,そう思います。できたほうが,この子の世界がぐんと広がる。生きやすくなる。この子の可能性はできる限り広げてあげたい,そう思います。そのときに同時に,自分自身を振り返ってみました。自分だって,「できないよりできたほうがよい」ということたくさんあるなあ,って。料理の出汁を素材から取っておいしくご飯をつくれたほうがいいだろうな,掃除機だって玄関掃除だって毎日できたほうがよいだろうな,裁縫だって上手にできてお名前刺繍や通園バッグの手作りができたほうがよいだろうな,見えない収納の雪崩がおきないように(笑)整理整頓できたがよい!!とか…

 でも,いろんなできたがよい,があっても「今,自分にできること」って限られていることあります。あ,もっと言うと,「できるようになりたいこと,と,できるけどしないこと」とあるかもしれません。

 親も子どもも同じように思います。自分自身で「こうなりたいなあ」「でもできない」という願いと葛藤が,発達の原動力と聞きます。保育士だったときに,簡単に手を出して子どもの願いを手伝ったとき先輩保育士から怒られました。「できないときが,大事なの!!!」と。「できるようになりたいな,でもできない。できないなあー,という思いをたくさんたくさん蓄えて,自分で乗り越えたときこそ,その子の発達を保障したことになるの!」と。

 できないことがいっぱいのお子さん,そういう意味で,「大丈夫!!」ですね。「できるようになりたいなあー,でもできないなー」という葛藤をたくさん味わえますね。だからこそ,私たち大人はそばで「できるようになりたいよね,できないとき悔しいもんね。母ちゃんも一緒だよ」

 こ~んなまなざしだと,子どもは救われるかもしれないですね。そして,できるけどしないときだって「へへへ,母ちゃんもいっしょだよ★」って自覚が,親子共に生きやすさにつながるかな~,とも思うときがあります。不完全なのは,子どもも私たち大人もいっしょですね。






梅崎  
梅崎さん 
 細川さんは,できるようになりたいと願う子どもの気持ちに目を向けられたんですね。そして,できるようになりたいのは,ダメダメ母ちゃんも一緒だと(笑)。そんな自覚こそがもしかしたら,子どもの気持ちを育んで,子どもを育てるのかもしれないと教えてくださったのでした。

 同様に,幼稚園の先生からエピソードをうかがったとき,私が思ったのは,「これって,誰の話なのかな?」ということでした。「できるようになりたいと思っているのは,子どもなの?親なの?」と感じてしまったのです。

 できるに越したことはない,そして,できるようになりたいと願う気持ちも大切。しかしそれ以上に目を向けたいのは,その気持ちが誰のものなのか。

 早速,エピソードをお話ししてくださった幼稚園の先生に,「悩んでおられるお母さんに,そう尋ねていただけませんか?」とお願いしてみます。お母さん,上手に整理してくださるといいなぁ。

 細川さんも掃除・裁縫や整理整頓,頑張ってね(笑)。