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保育のクロス・ロード 1

梅崎高行/細川美幸 往復書簡

掲載:2013年5月23日




 私たち(梅崎高行、細川〔旧姓:坂口〕美幸)は、 ' あちら立てればこちら立たず ' と言われる保育(i)において、対話による問題解決こそカギだと考えてきました。「クロスロード発達支援者版」も、そのような意図から作成されたカードゲームです(ii)。ゲームがきっかけとなり、かかわる人の ' 終わらない対話 ' (iii)に至ることが期待されたのでした。

 ゲームはいまも、研修会や保育士養成の場で活用されています。何よりその精神は、保育の世界で広く共有されつつあるように思われます。そしてこうした動向こそが私たちの背中を押し、対話をより掘り下げようとする思いへ駆り立てるのです。大げさに書けば「きっかけを必要とした時期は過ぎた。保育の対話は次の時代を迎えている」となるでしょうか。

 もっとも、先に記したように、 ' 終わらない対話 ' に至ることが、当初からクロスロードに込められた意図でした(iv)。ゲームの開発・活用を経て、ようやく私たちにその準備が整ったのかもしれません。この間私たちのそれぞれが育児を経験した点も、転機の背景としてあるように思われます。いま一度、 ' 保育のいま ' を見つめたクロスロードをくぐり、保育を進める次の対話を生み出せればと願っています。このコラムは、梅崎・細川の往復書簡といった体裁で進めさせていただきます。


梅崎  初回ということもあり、肩に力が入り過ぎました(苦笑)。細川さん、いつものように柔らかく、まとめていただけますか。


細川  『大げさに書けば…』のくだりには、思わず吹き出してしまいました(笑)。しかし、笑った後に、力が湧いてきました。実は、「世の中というのは、なかなか ' 対話 ' の成立が難しいのだな」と改めて実感していた今日この頃だったからです。何が対話には必要なのでしょうね?ぜひ、皆さんとも一緒に考えていきたいです。


(i)鯨岡 2002. 〈育てられる者〉から〈育てる者〉へ 関係発達の視点から NHKブックス
(ii)梅崎・坂口 2010. クロスロード発達支援者版 *ご興味・ご関心ある方は筆者までお問い合わせ下さい
(iii)矢守 2007. 「終わらない対話」に関する考察 実験社会心理学研究, 46, 198-210.
(iv)矢守・吉川・網代 2005. 防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション ナカニシヤ出版