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『赤ちゃんは世界をどう学んでいるのか:ヒトに備わる驚くべき能力』

著者:奥村 優子
出版社:光文社新書
出版年:2025年
出版社書籍案内ページ:
https://books.kobunsha.com/book/b10137091.html

評者:佐柳 信男(会員)
投稿日:2026年6月3日

 かつては何もできないと考えられていた赤ちゃんですが,この20年ほどで「赤ちゃんの有能さ」を示す研究が次々と発表されてきました。これらの成果は一般書としても開一夫(著)『赤ちゃんの不思議』玉川大学赤ちゃんラボ(編)『なるほど!赤ちゃん学:ここまでわかった赤ちゃんの不思議外山紀子・中島伸子(著)『乳幼児は世界をどう理解しているか』などとしてわかりやすく整理されてきています。

 本書は「有能な赤ちゃん」に関する最新の知見を取り入れた一冊です。主に2歳までの赤ちゃんの能力についての科学的知見と,その後6才頃までの発達の特徴も取り上げています。著者は第一線の発達心理学研究者で,自らの研究成果も多く交えていますが,同時に子育て真っ最中で,自分の育児と絡めた視点で紹介しているところが上記の書籍と一線を画します。

 本書は,「赤ちゃんは学びたい」,「赤ちゃんと道徳」,「赤ちゃんとことば」,「赤ちゃんとメディア」,「赤ちゃんと絵本」,「赤ちゃんとロボット」の6章で構成されています。どのトピックの育児中の親にとって気になると思いますが,その一部だけをかいつまんで紹介します。

 第2章「赤ちゃんと道徳」では,赤ちゃんが生まれつきの道徳観を備えていることを示すエビデンスが整理されています。たとえば,生後3ヶ月でも意地悪をするキャラクターを見ることを避ける(ように見える)ことが注視研究から明らかになっています。6ヶ月でも,意地悪なキャラクターと優しいキャラクターが登場する人形劇を見せた後でキャラクターを選ばせると,ほぼ確実に優しいキャラクターを選びます。また,新聞報道もされた研究で,生後8ヶ月で意地悪なキャラクターにお仕置きを与えます。これらのことから,赤ちゃんは生まれつきある程度の正義感があり,善悪を見抜く力もあることがわかります。

 第4章「赤ちゃんとメディア」も現代は避けて通れないテーマです。特に,世界保健機関(WHO)などは2歳未満の赤ちゃんはテレビ,スマホ,タブレットのスクリーンタイムはないことが望ましく,2歳児でも最大1時間だと推奨する中でデジタルメディアとの付き合い方は非常に悩ましいところです。そんな中でも,親子でテレビや動画見ると学習できることや,親子で一緒にタッチスクリーンで学習できることを示していることは育児中の親にとって,「禁止事項ばかり」の状態から「やれること」を提示しているのはありがたいことです。

 その他にも多くのトピックがぎっしり詰まっている一冊ですが,専門的な知見もとてもわかりやすく紹介されていて読みやすいです。著者は「はじめに」の中で本書を通して「赤ちゃんへの見方が変わり,かかわる楽しさが増すかもしれません」と述べていますが,まさにその通りだと感じました。評者も発達心理学の授業で学生に紹介します。


【評者】

佐柳 信男(山梨英和大学 教授)


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