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『親力をのばす0歳から18歳までの子育てガイド ポジティブ・ディシプリンのすすめ』

著者:ジョーン・E・デュラント
監修:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
訳:柳沢圭子
出版社:明石書店
出版年:2009年
出版社書籍案内ページ:
https://www.akashi.co.jp/book/b65967.html

評者:池田詩子(保護者会員)
投稿日:2024年5月31日

 本書に出会ったのは、子どもが二人とも幼児の頃でした。この頃の私は、長子に通じたやり方が次子には通じないことに苛立ったり、二人の育児に余裕なく思い通りいかないことに落ち込んだりしていました。当時、子どもが私の言う通りにならない時、高圧的な態度で押し切る方法や矢継ぎ早に言い負かすやり方では、子どもがうまく学べないことを何度も経験していました。結局は子どもの傷ついた表情に気づき私が自己嫌悪を起こすか、子どもの反発を招き状況がより悪化するかでした。本書を読んでみて、私が子どもに本当にしてあげたい子育てはこれではないかと、希望の光が差し込むような感覚を持ったことを覚えています。

 書籍では『効果的な育児に必要とされる4原則』を提唱しています。本レビューでは、私の子育てを振り返りつつ4原則のうちの二つに触れたいと思います。

 原則の一つは『課題を解決する』です。本書によって、子どもとの衝突は子育ての失敗ではないと気づくことができました。書籍には

“自分がいらだってきたと感じたとき、それは大切なことを—今お子さんに靴を履かせるよりずっと大切なことを—お子さんに教えるチャンスだという合図なのです

と書いてあります。そして

“うまく対処すれば、お子さん自身がいらだったときにどうすればいいか、その方法を教えることになるのです”

 私は、子どもとのぶつかり合いで生じるストレスから距離を置いて、ぶつかり合いを問題解決場面として捉えられるように徐々になりました。この機会をどのように使うかという前向きな気持ちで子どもに向き合えることが増え、子どもと落ち着いて話し合えることが増えました。

 もう一つの原則は『子どもの考え方・感じ方を理解する』です。

“それぞれの年齢において、子どもはどう考え、どう感じているのか、そして子ども特有の行動にはどういう理由があるのかについて”の理解が大切です。すなわち、子どもの発達段階と生まれ持った気質があるという知識を自分の子育てに利用します。それらの知識は、目の前の子どもへ年齢不相応なことや、気質と反することを私が求め過ぎることを、良い意味で諦めさせてくれました。結果的に私の怒りを減らし、子どもの視点から場面を見る能力を育ててくれました。私の心に響いた文章は

“この(評者補足:かんしゃくの)気持ちがわかる親はたくさんいるでしょう。なぜなら、子どもが「やだ!」という理由がわからないとき、私たちも不満を感じて怒り出したくなることがあるからです”

というものです。私は勝手に子どもにつけていた「怒りっぽい子」というレッテルに気づき、子どもが爆発するのは私が感じるような情けない気持ち故かもしれない、やりきれない気持ちからかも、大事にされていないと感じたのかもと幅広く想像し、子どもへ苛立つのではなく共感ができるようになりました。

 子どもは思春期を越え、一人は成人しました。今やこの本は、擦り切れどのページも開きやすくこなれています。本書のお陰で、不用意に子どもを傷つけることを免れ、子どもと話し合うことでお互いの問題を解決できる協力関係を築くことができたと感じています。日本子育て学会へ最初に紹介したい本!といえば、私が長く愛用したこの一冊です。


【評者紹介】
池田詩子(一般社団法人ポジティブ・ディシプリン コミュニティ代表理事)


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